寺田心「監督のヒミツの台本で演技が楽しくなる」 映画『ばあばは、だいじょうぶ』初日舞台挨拶
2018年ミラノ国際映画祭W受賞
10万人以上が泣いた第3回「児童ペン賞」童話賞(2017年)を受賞した絵本が感動の映画化
5月10日、映画『ばあばは、だいじょうぶ』の公開初日舞台挨拶が行われ、主演の冨士眞奈美(81)、寺田心(10)と、70歳差の二人が登壇した。本作は、2018年12月、イタリアで開催された「ミラノ国際映画祭」では最年少主演男優賞賞(寺田心)、最優秀監督賞(ジャッキー・ウー)のW受賞を成し遂げている。(フォトギャラリー&舞台挨拶ダイジェスト動画)
映画『ばあばは、だいじょうぶ』の原作は、10万部以上のベストセラー絵本「ばあばは、だいじょうぶ」(原作:楠章子/挿絵:いしいつとむ)で、第63回青少年読書感想文全国コンクール課題図書・小学校低学年の部(2017)に選ばれ、第3回「児童ペン賞」童話賞(2017)を受賞している。
2025年には700万人を突破し、「65歳以上の高齢者」のうち5人に1人が罹患すると言われている(厚労省推計)認知症。そんな誰もが避けては通れない社会の大きな問題を、本作は小学生の視点から描き出している。
メガホンを取ったジャッキー・ウー監督が「お涙頂戴ではなく、“チャーミング”にしたかった。それを演じられるのは冨士眞奈美さんだけ。」と、冨士眞奈美をキャスティングした経緯を語ると、「監督は自由にモダンなおばあさんでいいですって言ってくださって、それで自由にやっていくうちに、自分が“私、認知症かしら?”って思うくらいに自然にできました。」と、冨士眞奈美は振り返った。
また、「監督にはヒミツの台本があるんです!それを見るとお芝居をすることが楽しくなります。」と寺田心。ジャッキー・ウー監督が「それは僕の飯のタネだから言っちゃダメ・・・」と制する一幕も。
そんな寺田心について、冨士眞奈美は、「この子は、リハーサルの時から泣いちゃって、とても演技派です。プロフェッショナルなんです。」と、81歳のベテラン大女優が弱冠10歳の俳優を大絶賛していた。
舞台挨拶詳細
舞台挨拶ダイジェスト映像&予告編
撮影を振り返って
冨士眞奈美
昨年の夏、熱いさなかに撮った映画ですけれども、とっても雰囲気が良くて楽しくて、監督もファッショナブルな人ですし、心ちゃんもとってもかわいくて、撮影が楽しかったです。
実際は、心ちゃんは、優しかったおばあちゃんがどんどんどんどん変わっていくので、ちょっと恐怖だったとは思うんですけど、でも、実際はすごく楽しく撮影することができました。
私は撮影中に階段落ちをやりまして、腰がちょっと痛かったんですけど、そのぐらいで後はほんとうに十分楽しめた映画だったと思います。ありがとうございます。
ジャッキー・ウー監督
認知症という病気、僕は病気とは言いたくなくて、ひとつの出来事だと思っているんですけど、そこに向かっていく映画だと思います。
原作絵本の映画化の経緯
– 今回、「ばあばは、だいじょうぶ」の原作を映画化された経緯を教えてください。
ジャッキー・ウー監督
前作『キセキの葉書』(2017年、主演・鈴木紗理奈)が海外で評価いただいて、その時のスタッフと次の作品をどうするかという中で、本作の原作の絵本に出会いました。
30数ページの絵本を2時間弱の映画にする創作力との戦いで、登場人物からなにから付け加えながら、本編を変えていかないように、本映画を製作いたしました。
「私、認知症かしら?」
– 認知症になるばあばを演じられてますが、最初に出演が決まった時のお気持ちをお聞かせください。
冨士眞奈美
私は周りにもあんまり認知症の方はいらっしゃらないんですけど、認知症でも種々いろいろあると思うんですよ。
監督が、自由にモダンなおばあさんでいいですよって言ってくださって、それで自由にやっていくうちにほんとになんだか“私、認知症かしら?”って思うくらいに自然にできちゃったんです。
だから、監督が自由にさせてくれたおかげです。
– 冨士眞奈美さんの出演を決定された理由は?
ジャッキー・ウー監督
今、お話いただいたように、まず、絵本をご覧になった方はわかると思うのですが、ただ認知症になっていくおばあちゃんだけではなくて、やっぱりラジカルで攻撃的なところもあるし、一番はチャーミングじゃなければこの映画は単にお涙頂戴になってしまい、成り立たないなと僕は思いました。
チャーミングでフレンドリーに演じられる人って日本では、冨士眞奈美さん以外はいないと思いませんか?
(会場拍手)
冨士眞奈美さんと初めてお会いした時、「私以外に候補は何人いるんですか?」っておっしゃって、すかさず、「冨士眞奈美さんしかいません。」ってお答えさせていただいて、今回、この役をやっていただきました。
– 撮影の際に、冨士眞奈美さんだからできたシーンがあると伺いました。
ジャッキー・ウー監督
認知症はいろんな描き方があると思いますが、僕は、正気から病気に移るその移り変わりを撮りたかったんです。
冨士さんとお話をさせていただく中で、とにかくひとつだけ約束事をお願いしました。
それは、とにかくまばたきはできるだけしないでいただきたいと。
長いシーンを撮ります。その中でのエモーションは僕が言いますので、その間まばたきをしないように表現をしていただけませんか?と非常に無理な注文をその場でしました。
ですので、テイク5くらいはいくかなと思っていたんですが、1度のテイクで撮り終わることができて、これはほんとに冨士眞奈美にしかできないなって思いました。
寺田心は、演技派のプロフェッショナル
– ジャッキー・ウー監督作品の主演が決まった時のお気持ちは?
寺田心
ほんとにとても嬉しかったです。
オーディションを受けた時は、名古屋の祖母の家にいたので、帰宅してからマネージャーさんから電話で「受かったよ」連絡があった時はほんとにとっても嬉しくて。祖母も、真っ赤な顔で涙を流しして喜んでくれました。僕もがんばらなきゃ!と思いました。
冨士眞奈美
でも優しかったばあばが突然怒ったり怒鳴ったりして怖かったでしょ?
寺田心
ばあばがばあばじゃなくなったりとか、ほんとにばあばなのかなって思ったりするけど、やっぱりシーンが終わったら、優しい優しいいつものばあばに戻るから、やっぱりすごいなって思いました。
冨士眞奈美
ばあばが最後に、ばあばは大丈夫って言った時に、この子、ほんとにポロポロ泣いちゃって、リハーサルの時から泣いちゃって、そんなに泣いたら涙がなくなっちゃうくらいポロポロ泣いちゃって、とっても演技派なの。プロフェッショナルなんです。
寺田心
そんなことないよ、恥ずかしい(笑)
– 優しかったばあばがどんどん変わっていってしまう姿にとまどう孫の翼くんを演じられましたが、役作りは大変でしたか?
寺田心
最初、ばあばに会った時に、「ばあばって呼んでいいですか?」ってお聞きしたら、「いいわよ」ってギューってしてくださって、ほんとのばあばのようでとても嬉しかったです。
– この作品は心くんの新しい役者としての顔が見れたと感じましたが、監督ならではの引き出し方はありますか?
ジャッキー・ウー監督
僕は前作でも子役と組ませていただきましたが、子役とはあまり思ってないんです。
役者としてしっかり認識していますので、心くんとはそういう話をいっぱいしました。
一番最初から、世界に向かって頑張ろうねって。日本もそうですけど、海外に向かって頑張ろうねってお話をさせていただきました。
ジャッキー・ウー監督の“ヒミツの台本”!?
寺田心
あと、監督さんだけのヒミツの台本があるんです。
ジャッキー・ウー監督
僕が食べていくためのヒミツなんで・・・
寺田心
はい。バラします(笑) そのヒミツの台本の内容を教えていただくと、とってもお芝居が楽しくなるんです。
– 2年連続、海外の国際映画祭において、最高の賞を受賞させたということで、雑誌などでは、“受賞請負人”と紹介されていますが、受賞させる秘訣などはございますか?
ジャッキー・ウー監督
ですから、それは(心くんが言ったように)ヒミツです(笑)
当然、秘訣は持っています。海外でずっと映画に携わっているので、何が大事なのかっていうこともわかっています。
一度、雑誌の取材でそのひとつをお話したんですが、我々の映画は海外にいくと、外国映画になるんですね。そうすると、観客はどうしても字幕に目が逸れてしまうんですね。そういうことをふまえた上で演技を考えていくと、観る人の心に残るかなと思います。
あとは、心くんが言った“ヒミツの台本”にいっぱい書いています(笑)
– 最後のメッセージ
ジャッキー・ウー監督
先ほどもお話しましたけれど、なにかのバイブルに使うということではなくて、身近な出来事として、これからも起こってくることがあるかと思いますが、一番、嘆き、悲しみ、苦しむのはやはり、家族かな。
でも、最後の最後に一番そばにいてあげるのも、やはり家族なんだなという覚悟と想いが伝わればいいなと思っています。
フォトギャラリー
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映画『ばあばは、だいじょうぶ』
忘れる病気のばあばが教えてくれた忘れられない物語。
物語
ちょっと弱虫な小学生の翼(寺田心)は、喜寿を迎えたばあば(冨士眞奈美)、おとうさん(内田裕也)、おかあさん(松田陽子)と4人暮らし。翼は、ばあばのことが大好きだ。何かくじけそうになると、ばあばのところに行って、話を聞いてもらう。そんな時、ばあばは、必ず「だいじょうぶだよ」と言ってくれる。学校でいじめられても、ばあばが助けてくれた。
そんな優しいばあばが少しずつ変わっていく。同じ質問を何度も繰り返すようになり、得意だった編み物ができなくなる。
ばあばは「わすれてしまう病気(認知症)」になってしまったのだ。怒り出したり、大切にしていた庭の植物を枯らしてしまったり、翼のために作ったジャムを一人で食べてしまったり……。
翼はなんだか怖くなって、近寄らなくなってしまった。
そんなある日、ばあばは、靴も履かないで家を出たきり、いなくなってしまった。
「ばあば、どこへ行ってしまったの?」 やがて、翼は、ばあばの秘密を知る……。
出演:
冨士眞奈美 寺田 心
平泉成
松田陽子・内田裕也/土屋貴子・久保寺淳・小暮智美
金内真弓・金島清史・真上沙剣・板倉佳司
原作:楠 章子「ばあばは、だいじょうぶ」(童心社刊)
監督:ジャッキー・ウー
企画・プロデュース:新田博邦
脚本:仁瀬由深
音楽:田中和音
撮影監督・編集:小美野昌史
プロデューサー:田中佐知彦
協力:アンテーヌ/グリーンランド/ジョビィキッズ 企画協力:童心社
配給:イオンエンターテイメント/エレファントハウス
企画・制作:ミューズ・プランニング 製作:グローバルジャパン
医学監修:杉山孝博 (公益法人「認知症の人と家族の会」)
©2018「ばあばは、だいじょうぶ」製作委員会
公式サイト:https://grandmaisokay.com/
2019年5月10日(金)より全国イオンシネマにて公開
ミラノ国際映画祭で2冠の快挙
『ばあばは、だいじょうぶ』は2018年12月、イタリアで開催された「ミラノ国際映画祭2018」で公式上映され、ウー監督と寺田が出席。
上映中にはすすり泣く声も聞かれ、上映後にはスタンディングオベーションで迎えられた。
授賞式に出席した寺田は名前を聞き、嗚咽して喜んだ。「外国で映画が上映されるとしか聞いていなかったので、すごく驚きました。ばあば役の冨士眞奈美さんと、本当のおばあちゃんと、僕をいつも応援してくださる方に感謝したいです。おばあちゃんにも知らせたら、良かったね、感謝の気持ちだね、と泣いていました」と当時を振り返った。
なお、スタンディングオベーションが起きたのは、第5回を迎えた映画祭でも初めて。ウー監督は「審査委員長がビックリした」と言っていました」と明かした。
[写真・記事:Jun Sakurakoji]
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