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アメリカン・アニマルズ

レイトン監督×映画秘宝編集長 映画『アメリカン・アニマルズ』の秘密。特別映像解禁も。

ドキュメンタリーとドラマのハイブリッド映画作品

映画『アメリカン・アニマルズ』が5月17日に公開される。本作は、2004年に、アメリカ・トランシルヴァニア大学で実際に起きた強盗事件を描いた100%リアルクライムムービーであるだけでなく、なんと、4人組の犯人の本人たちと、彼らに縛られる被害に遭った司書の女性が証言者として映画に登場するのだ。
なぜ今、本作を撮ったのか? どうやって本人たちを映画に出演させることができたのか? メガホンを取ったバート・レイトン監督に、映画秘宝編集長の岩田和明氏が尋ねた。

バート・レイトン監督と、映画秘宝編集長・岩田和明氏との対談が実現したのは、5月10日、都内で行われた本作試写後のトークイベントにて。
岩田氏自身は本作について「今年の『カメラを止めるな!』枠はこれだ!」と絶賛している。

アメリカン・アニマルズ

バート・レイトン監督×岩田和明(映画秘宝編集長)

映画『アメリカン・アニマルズ』とは?

犯人は大学生4人組、狙うは図書館に保管された12憶円のヴィンテージ本。犯罪初心者の彼らは、『レザボア・ドッグス』や『オーシャンズ11』など、往年の犯罪映画をお手本に強盗計画を企てていく。何一つ不自由なく生活する4人を犯罪に駆り立てたものとは一体何だったのか?そして前代未聞の計画は成功することができるのか?

バート・レイトン監督×岩田和明(映画秘宝編集長)

アメリカン・アニマルズ

バート・レイトン監督×岩田和明(映画秘宝編集長) 2019年5月10日 スペースFS汐留にて。

犯人たちとの信頼関係の築き方は?

岩田和明(映画秘宝編集長)
この映画は取材力の高いノンフィクションを読み終わったような、爽快な読後感を持ちました。
実際の犯人4人全員と、被害者の女性をスクリーンの中に登場させることは、彼らとの相当な信頼関係が必要だと思います。どのようにして彼らの懐に入り、出演の承諾を得られたのでしょうか?
私自身も記者ですので、その方法にとても興味があります。

アメリカン・アニマルズ

岩田和明(映画秘宝編集長)

バート・レイトン監督
ひとことで言うと「時間をかけた」ということです。
私がこの事件の記事を読んで興味を持った当時は4人はまだ刑務所の中で、8年の刑期の半分くらい終えたところでした。
恵まれた生活環境で育って教養もある若者たちが、なぜ強盗という計画を企て、人生を台無しにし、結果家族をも傷つけるようなことをしてしまったのか?
私は、そういう彼らの動機を知りたいと思いました。
そこで、刑務所にいる彼らに手紙を書いて、それから、数年間かけて手紙のやりとりをしました。
すると、彼ら自身、これまで誰とも話せてなかったので、自分たちの内面に溜めていたものを私に吐き出すようになったんです。

アメリカン・アニマルズ

バート・レイトン監督

岩田和明(映画秘宝編集長)
映画に出てくださいとは、どのタイミングで言ったんですか?

バート・レイトン監督
手紙のやりとりを始めて数カ月後だったと思います。
手紙のやりとりを始めたばかりの頃は、僕自身もどんな映画にするのかはっきりしてなかったんですが、彼らと手紙を通して語り合う中で、スペンサーが「自分はアーティストを目指していた」と言ったことがきっかけで、だんだんと映画の構成が見えてきました。
ただの強盗映画ではなく、方向性を失ったアイデンティティを探し求めている中、間違った判断をしてしまった若者たちを描きたいと思うようになりました。

役者ではない彼らにリラックスして語ってもらう方法とは

岩田(映画秘宝編集長)
インタビューシーンで、彼らは役者でもないのにとてもリラックスして語っていますが、あれはどのようにして撮ったんですか?

バート・レイトン監督
さっきも申し上げたように、彼らと時間をかけて信頼を築いていき、友人と話すようにしてもらったということもありますが、撮影方法も工夫をしました。
カメラの前にマジックミラーを置いて、彼らからカメラが見えないようにしました。
私もマジックミラーの向こう側にいるので、お互いは見えないですが、二人が見つめ合ってしゃべっているようになります。
だからあれだけリラックスしてしゃべっているように見えるんです。

アメリカン・アニマルズ

被害者女性の気持ちを最優先して製作した

岩田和明(映画秘宝編集長)
映画に出たくないって断った人はいませんでしたか?

バート・レイトン監督
ベティ・ジーン(司書で、強盗時に4人に縛られた被害者)は、最初は断っていました。どういう映画になるかわからないし、(自分に危害を加えた)4人に対してまだ怒りを抱いていたので。
それを私が少しずつ説得していきました。
もし、彼女が満足できない部分があれば、そこは尊重して変更すべきとも考えていましたが、完成した映画を見た時は、彼女が一番喜んでくれました。
それまでは犯人たちがどういう人物なのかまったく知らなかったところ、この映画を観て、ほんとうはそんなに悪人ではなく、若気の至りの判断をしてしまったんだというのを、映画鑑賞後にわかって、やっと彼らのことを許すことができたそうです。
なので、この映画自体がポジティブな効果があったと思っています。

『アメリカン・アニマルズ』を作ろうと思ったきっかけ

“問題が無いのが問題だった”

バート・レイトン監督
脚本の書き方のマニュアルによく書いていることは、まず主役を知ること。そして彼がどういう問題を抱いているかということ。
今回の作品について言うと、4人の若者たちは「問題が無いのが問題だった」。
例えば、スペンサーはアーティストになりたいけれども、苦労を知らないから良いアーティストになれないという悩みがあった。
これは今の時代の風潮に似ているところがあって、みんな特別な誰かにならなくてはいけない、有名にならなくてはいけない、足跡をなにか残さなければいけないというプレッシャーの中で生きていると思うんですけど、それは現実的ななプレッシャーではないと思うんです。なぜなら、普通の生活を送る人が大半だと思うからです。
でも、西洋では、トランプ大統領がよく使いますが、「普通=ルーザー(Looser)」という言葉がある通り、そういう世の中の風潮があります。
映画の物語は2004年のことですが、今の時代により響くんじゃないかなと思って映画化しました。

アメリカン・アニマルズ

特別映像解禁!

バリー・コーガンが語る『アメリカン・アニマルズ』の魅力

この度解禁されたのは、強盗計画を企てる大学生4人組の中で一番の小心者でありながら、トランシルヴァニア大学の特別収集品図書館に納められた希少本の強盗話を持ち掛ける張本人であるスペンサー・ラインハードを演じたバリー・コーガンのインタビューを収めた特別映像。
『ダンケルク』『聖なる鹿殺し』などでその強烈な存在感と個性を見せつけたバリー。
「今回のキャスティングは、犯罪グループを結成する流れに似ていたかもしれない」とバート・レイトン監督が語るように、それぞれの「個性」を買ったキャスティングとなった。
画家になることを目標に平穏な学生生活を送っているものの、自分には何かが足りないと思い悩むスペンサーの役どころについてバリーは「彼はアーティストだ。外の世界とのつながりを求めていた。だが彼は善悪の間で葛藤していたんだ」と自身の役について分析し、スペンサーという人物を観客にある種の共感を与えながら見事に演じ切った。

今回解禁された特別映像には、「オレたちは待っていた。何かが起こる日を。やるか、やらないか。何かが起これば特別な人生になる」というスペンサーたちのセリフがあるが、まさに若者の心の叫びを代弁しているかのような彼らのセリフや行動に注目だ。
また、バリーは本作の魅力について、「劇中で本人が登場して、またドラマに戻る瞬間が好きなんだ」と、劇中に犯人本人がインタビュー形式で登場するという未だかつて見たことのない本作ならではの面白さについても言及している。

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映画『アメリカン・アニマルズ』

ストーリー
アメリカ・ケンタッキー州で退屈な大学生活を送るウォーレンとスペンサーは、自分が周りの人間と何一つ変わらない普通の大人になりかけていることを感じていた。
そんなある日、2人は大学図書館に時価1200万ドル(およそ12億円相当)の超える画集「アメリカの鳥類」が保管されていることを知る。
「その本が手に入れば、莫大な金で俺たちの人生は最高になる」そう確信したウォーレンとスペンサーは、大学の友人エリックとチャズに声をかける。
『スナッチ』『レザボア・ドッグス』『オーシャンズ11』などの犯罪映画を参考に作戦を練ることにした4人は、特殊メイクで老人に扮し図書館に乗り込む計画を立てる。
来たる決行日、老人の姿に変装した4人は図書館へと足を踏み入れる――。そこで彼らを待ち受ける運命とは?これは、刺激を求めて道に迷ったアメリカン・アニマルズ達の物語。

監督・脚本:バート・レイトン『The Imposter』(英国アカデミー賞受賞)
出演:エヴァン・ピーターズ、バリー・コーガン、ブレイク・ジェナー、ジャレッド・アブラハムソン
提供:ファントム・フィルム、カルチュア・パブリッシャーズ
配給:ファントム・フィルム
© AI Film LLC/Channel Four Television Corporation/American Animal Pictures Limited 2018
公式サイト:http://www.phantom-film.com/americananimals/

予告編

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5月17日(金)より新宿武蔵野館/ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開

場面写真

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[写真・記事:Jun Sakurakoji]

 

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